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7月は観光シーズンの幕開け。シンギギ界隈でも欧米人の姿を見かけることが多くなりましたが、日本人は依然として少数派です。中旬に開催された年恒例のシンギギフェスティバルも観客は2割が外国人、8割がインドネシア人で、最近ではロンボクを訪れる旅行者もジャワやスマトラからのインドネシア人の方が多くなりました。見ているとインドネシア人の方がよっぽど羽振りがよく、インドネシアは今小バブルだとも聞きましたが、本当のところはどうなのでしょうか。もともと裕福だった層がさらに富裕度を増して消費にいそしんでいるだけで「格差」は広がっているのでしょうか。いずれにせよ、6月から7月にかけてちょうど学年末の休みとも重なり、家族連れのインドネシア人家族が何組か帆石亭のお客様となりました。
さて、今月は「アキカ」というイスラムの行事を目撃する機会に恵まれました。 これは日本でいう「お七夜」のようなもので、子供が生まれて7日目に山羊をつぶして人を招きご馳走をふるまう祝い事です。 大きな道路から帆石亭に入る手前に小さな店があり、うちに泊まるお客さんは大体この店で水やちょっとしたものを買うことになります。店の主人のカンダールにはゴリスとゴリブという二人の男の子がいますが、1歳半になるゴリブの方は生まれてすぐにこのお祝いを済ませたそうですが、5歳のゴリスの方は当時お金がなくてできなかったということで、今回とり行う運びとなりました。 男の子は山羊二頭、女の子は山羊一頭を屠るのが普通だそうですが、カンダールは奮発して四頭の山羊を買いました。そのうちの一頭は毛足が長くまるまると太っていて顔つきも他の山羊とはまるで違って見える立派なものでした。3,4日庭において草を食べさせてからご馳走のその日につぶします。 「朝早くつぶすから見においで」と言われていたのですが、うっかり忘れていて慌ててカメラを持って下に行った時にはもう山羊たちは皮をはがれて首が木の枝にかかっていました。枝の上の首は微笑んだような穏やかな表情をしていました。牛もたしかこんな表情だったと記憶しています。中国の雲南省によく行っている友人の話では、向こうでは犬も豚同様食用となるのですが、何故か堵殺された豚は笑った顔をしているのに犬は断末魔の表情をしているということです。やはり犬というのは人間の友達になるために生まれてきた動物で、殺して食べたりしてはいけないのかも知れません。 山羊の首は香料といっしょに茹でで美味しいスープになるそうで、もう予約して持って帰る人が決まっていました。牡山羊の睾丸は癇の虫封じの薬になるそうで、これは野菜売りが夜泣きの止まない甥っ子のためにもらっていきました。 皮の方は海水でよく洗ってから一週間ずつ表と裏を日干しにして乾かします。モスクの銅鑼になったり、ロンボクの伝統芸能「スティックダンス」に使う盾になったり、「羊皮紙」ならぬ「山羊皮紙」としてアラビア書道が書かれて室内装飾にもなり、また小さく切って油で揚げて煎餅として食べたりもします。山羊皮の敷物は殊のほか暖かいそうで、「寒い」今の時期には重宝されるそうです。 肉はぶつ切りにしてシチューと串焼きにしていました。私が見に行った頃にはもう庭の6つのかまどにずらっと大なべが並び、ご飯を炊いたりシチュー鍋の用意ができつつありました。近所総出で20人あまりの人が鍋をかきまわしたり火吹き竹を使ったりして忙しくかつ楽しそうに働いていました。 かまどはこの日のために特別に外にレンガを積み上げてしつらえたものです、普段はカンダールの家でも隣のアディの家でも家の中でガスや灯油を使って調理しています。煮炊きの燃料には火力の強いマンゴーの木を使っていました。串焼きには椰子炭を使い、串に刺した肉が5,6本ずつ、バナナの木の茎をふたつに割ったものにさらに串刺しにして地面に細長く並べたレンガの上でいい香りを放っています。 「味見してみたら?」と肉を食べない私には野菜の味見をすすめてくれるのですが、十種類あまりの香料と大量のとうがらしと椰子の果肉の削ったものが混ぜ合わさったインゲンや青菜の和え物は案の定辛くて辛くてとても飲み下すことはできません。 「ロンボク」とはインドネシア語で「とうがらし」の意味ですが、本当にロンボクの人は辛いものが大好きです。人の家にご馳走に招かれても私には食べられるものが何もなかった、ということはよくあります。 結局、見ているだけでお腹がいっぱいになって、その日はうちへ帰って2月に来た友人が持ってきてくれた讃岐うどんを茹で、亀節でとった出汁に大根おろしと生姜と刻みねぎの薬味で昼食にしました。本当においしくて「日本人でよかった!」と思いましたが、考えてみれば彼らもあのこってりしたシチューを食べながら「インドネシア人でよかった!」と思っているのでしょう。 この日、山羊肉のご馳走を振舞われた人は100人近くで、村では親のない子供たちが招かれました。 山羊一頭の値段は日本円にして7000円から10000円ほどなので、この日の出費はこちらの物価にしてはかなりのものです。 インドネシア人は祝い事には惜しみなくお金を使い、出し惜しみをして「ケチ」と言われることはこの上なく不名誉なことのようです。冠婚葬祭のほか、家の建築や修繕、清掃などを近所の人が総出で手伝うのは日本の農村にも昔あった「結い」と同じもので、「建国の父」初代スカルノ大統領が近代社会の中に意図的にとり入れ、今もインドネシア中で行われています。日本のようにすっかり個人主義になってしまった国の人間から見るとインドネシアは「みんなで助け合う共同体の国」と映ります。 *今月のお客様はインドネシア(ジャワ、スマトラ)、オランダ、日本、ベルギー、フランスから。 |
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Bungalow Batu Layar (帆石亭) 黒野
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