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今夜の番組チェック

《2008年3月》

3月になったというのに天気の定まらない日が多く、大雨はないものの風の強い日、雷の鳴る日などがいまだにあって、今回の雨期は少し変です。

今月は、前の店の主人のカンダールに「鳥の鳴き声コンテスト」に連れていってもらいました。

インドネシア人は鳥が大好きです。ペットとして飼う動物のナンバー1は鳥、それも声のきれいな鳥で、声のよさによっては日本円で何万もの値段がついています。小さなめじろのような鳥で、ササック語で「黄色い鳥」という名前ですが、野生の状態では黄色かったものが人に飼われているうちに緑がかってきています。カンダールはそんな鳥を5羽も飼っていて、毎日手にとって水浴びをさせ、高級なバナナと蟻の卵(声をよくするためだそうです)をやり、声の訓練に余念がありません。毎週金曜日にはあちこちで鳥の鳴き声コンテストがあり、賞品は鶏や山羊ですが、規模の大きなコンテストになると山羊が4匹ももらえます。

この日カンダールはもっかお気に入りの「クラシック」と名づけた鳥を出場させました。鳥かごにすっぽりと布をかぶせ(移動中の景色が目に入ると余計なストレスをあたえるため)車に乗り込み出発。いつも通っている表通りからそれて曲がりくねったガタガタ道をかなり走ると、こんなところにこんな集落があったのかと意外に思える村が現れ、その外れの空き地がコンテスト会場でした。

午後4時半をまわった頃、三々五々、覆いをかけた鳥かごを携えた人たちがやってきて五千ルピアの登録料を払って鳥かごに番号札をつけてもらい、次々に3メートルほどの高さの竿にかごをかけていきます。番号札をめんこにして遊んでいた子供たちは追い払われ、ノートを手にした審査員も登場、緑の空き地はがぜん活気を帯びてきます。

子供も大人も集まっているのは男性ばかり。インドネシア人は闘鶏も好きだし、この国では鳥は「男のスポーツ」なのだなと感心していたら女性がやってきたのでおやと思ってよく見ると、それは大きなやかんを手にしたお茶出し係りでした。草の上に色とりどりの魔法瓶やコップが並べられ、ちょっとしたピクニックのようです。私もコーヒーとお芋をごちそうになりました。私のために特別にいれてくれたのか、甘み控えめのロンボクコーヒーとうすい塩味のゆでたマンジョカ芋は外で味わうからか格別においしく感じました。

そしていよいよコンテスト開始。その日は17羽の鳥が出場。合図の笛と同時に小石の入ったブリキ缶を持った人がさかんに缶をふりまわして音を出し鳥を刺激させると、いっせいに鳥たちはさえずりはじめます。10分間、三人の審査員は終始笑みを浮かべながらも真剣な表情で鳴き声に聞き入り、声のいい鳥をよりすぐり、第二次、第三次の最終戦へとすすみます。6時を回るころには竿の鳥かごは半分以下になっていました。カンダールの愛鳥クラシックはこの日どうしたわけかさえずらず、第一次で予選落ちしてしまいました。雨の振りだしたこともあって最終結果は見ずに帰ってきましたが、本当に楽しい午後のひとときでした。

その夜、この日のことを思い返していて突然私の頭に浮かんだのは小学校の時の音楽の教科書にのっていた挿し絵でした。何の歌の挿し絵だったかは覚えていません。山で農作業する人たちと、やかんと盆を持って歩いてくる姉さん被りの女の人と子供を描いた簡単な線画のようなもので、なぜかその絵がコンテスト会場の草上のお茶の風景にぴたりと重なったのです。あの大きなやかんはアルミ製、コップは赤や黄色のプラスチック、おやつはきっとふかしたさつまいも、と心の中の筆は何十年も前のモノクロの絵に次々と色をおいていきました。

またもや、昔の日本を今のインドネシアに見た思いでした。今の日本でもどこかに行けばあんな風景が見られるかもしれませんが、日本にいればどんな辺境にあってもやはり日本の時間の中に組み込まれてしまいます。日暮れ前のひとときを、あんなゆったりとした時間の中で過ごせるインドネシアの男性はほんとうに幸せだと思いました。南米にいた時にも感じたのですが、ゆっくりと流れる時間の中で過ごす人生がたとえ60年で終わったとしても、せわしない社会の100年分ぐらいの中身は十分にあるように思えます。

人間の幸せとは何か、ということをつくづく考えさせられた午後でした。


*3月7日ニュピ(バリ新年)、20日ムハンマド生誕祭、21日聖金曜日と今月は3つの宗教の祝日がありました。


*4月は私が日本に一時帰国するため「今月のロンボク」はお休みします。

4月25日(金)、26日(土)、27日(日)の三日間、東京都立川市のギャラリー「茶遊」で、ジャワ更紗のイベントにジョイント参加する形でロンボクの話、ダンス、布その他工芸品の展示即売を行います。布に興味ある方、お近くの方はお出かけください。

また、5月3日(土)には日野市の公共施設でロンボク紹介のイベントがあります。

「茶遊」のプログラムに関してはこちらをご覧ください。

Bungalow Batu Layar (帆石亭) 黒野

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